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既存の社団法人・財団法人が,公益認定を受けられない場合には,一般法人への移行を目指す必要があります。
一般法人移行の条件は,おおまかに言えば,
1.定款等の諸規定が,法律に適合していること
2.公益目的支出計画を適正に定めて確実に履行すること
の2点です。
このうち,中心となるのは,公益目的支出計画です。
法人が財団法人である場合には,規定整備も大きな問題となります。
公益目的支出計画において求められていることは,「公益目的財産額」を,「公益目的支出」によって,費消することです。
それでは,まず,「公益目的財産額」とは何でしょうか。
公益目的財産額とは,以下の式によって計算される金額です。
貸借対象上の純資産額(時価評価額)ー支出または保全が義務づけられている金額ー社団法人における基金
要は,「時価評価の純資産額から,控除できる金額を引いた額」と理解してください。
ここで注意が必要なのは,まず,純資産額は「時価」で評価するということです。
固定資産など,時価と簿価に開きがあるものについては,時価で評価し直さなくてはなりません。
次に,純資産額から控除できる金額は,公益認定における「非遊休財産」とは定義が異なるということです。
公益認定の場合と異なり,公益目的に使用することが確定している財産であっても,そのことのみで,公益目的財産額から控除することはできません。
収益事業に使用していた財産についても同様です。
「収益事業に使用していた」からと言って,「公益目的財産ではない」ということにはなりませんので,注意が必要です。
なお,計算上,公益目的財産額がゼロになる場合には,公益目的支出計画の実施は必要ありません。
次に公益目的支出計画についてです。
公益目的支出計画とは,公益目的財産額と同じ額だけ,公益目的支出を行うことです。
それでは,公益目的支出とは何でしょうか。
公益目的支出を行うには2つの方法があります。
まず一つは,公益団体に寄付を行うことです。
公益団体とは,国・地方公共団体・公益認定を受けた公益法人・学校法人などのことを指します。
これらの団体に寄付を行えば,寄付額が公益目的支出と認められます。
もう一つは,公益目的事業の実施によって,公益目的支出を行う方法です。
ただし,この方法による場合には,事業の実施によって「赤字」になる部分のみが,
公益目的支出として認められます。
事業の実施に伴って,経費以上の収入を得てしまっている場合には,公益事業のために経費を支出しているとしても,
公益目的支出とは認められません。
公益目的事業の定義については,基本的に,公益認定を受ける場合と同様になります。
よって,認定法上,公益目的事業と認められない事業については,原則として,公益目的支出計画の上でも,公益目的事業とは認められません。
ただし,その法人が,これまで実施してきた事業については,旧主務官庁の意見を聞いた上で,相当と認められれば,認定法上の公益事業にあたらないものであっても,公益目的事業として認められる場合があります。
なお,認定法上の公益目的事業にあたる事業であれば,これまで実施していなかった事業であっても,あらたに実施することは可能です。
公益目的支出計画については,公益目的支出の累計額が,公益目的財産額と同じ金額に積み上がるまで実施する必要があります。
ただし,期間制限は特に定められていません。
不当に長いと判断されない限り,自由に法人において期間を設定し,公益目的支出計画を策定することができます。
なお,公益目的支出計画は,法人の純資産額を減らせという要求をしているものではありません。
事業実施により赤字が計上されているかどうかは,あくまで事業単位で判断するので,公益目的支出計画上の事業が赤字にさえなっていれば,他の事業や収益事業が黒字になっていても問題ありません。
つまり
事業A(公益目的支出計画上の事業) 事業B(公益目的支出計画に入らない事業) 事業C(収益事業)
収支 ー100万円 収支 +100万円 収支 +200万円
という場合には,法人全体として200万円の黒字になっていますが,公益目的支出計画上の事業は100万円の赤字ですので,100万円の公益目的支出がなされたことになります。
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